naographの徒然なるまま

きた なおや による その日暮らしの日記

妄想旅行〜由布岳とアルザスのピノ・ノワール〜

 山を越え 谷を越え

福岡市から高速を飛ばして1時間、降りてから約30分ほど高低差のある真っ直ぐな一本道を何度か登ったり降ったり。

まんが日本昔ばなし”に出てくるおじいさんが、山を越え、谷を越えというシーンがあったが、この道を通るたびにそのシーンを思い出す。

長い下りが終わる頃、その小さな盆地の町に着いた。

由布院

昨年訪れたときは20年ぶりくらいだった。

駅前の雰囲気はそこまで変わりがなかったが、鳥居をくぐり別荘地の方へ向かう道には、所狭しと旅館とホテルが立ち並ぶ。

幼少の時、祖父の別荘があったころはよく遊びに来たものだが、その当時は田んぼに牛、豚小屋が立ち並び、空気がいいと窓を開けて走っていた我が家の車が一気にアノ香りで充満。

「くっさー!!」と言いながら急いで窓を閉めていたものだった。

その頃は、脇に流れる田んぼの用水路にも蓋はなく、覗く流水の中にはどじょうや、小魚もたくさん見られたし、その田舎の風景が都会暮らしの疲れた心を洗い流してくれていた。

 

もう、そんな雰囲気はないかと思っていたが、知り合いのカメラマンからいい宿を撮影した、是非泊まってみるといいと勧められ、町からすこし離れた山あいの小さな古民家の宿に行くことにしたのである。

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「お宿 徒然」

そこには小さな藁葺き屋根の古民家が3軒並んでいた。

3組限定の離れの宿だ。

敷地の中央にあるレストラン兼受付でチェックインを済ませた後、僕の宿泊する一軒に通された。

木の引き戸を開けると、そこには畳の部屋があり、その奥の障子は開かれ名峰 由布岳が見える。

これは贅沢だ。

吸い込まれるように部屋に入ると、障子の外には小さな露天風呂と庭があり、そこには木製のテーブルとチェアが置いてある。

掛け流しの風呂のため、ちょろちょろと水音が静かにこだまする。

宿の人が言うには、ここで食事をする方も多いそうで、僕もそうすることにした。

 まだ夕食まで時間があるので、まずは一風呂いただく。

大して冷えていない身体も、露天の湯に浸かる時は、じわじわと痺れを感じ「あっ」っと声が出てしまう。

湯の温度にも慣れた頃、目前に広がる由布岳雄大さと懐かしさに心を奪われた。

出入りしながら、湯と名峰を楽しむ。

何度目かの湯涼ののち、体の冷えを感じ再び石風呂に浸かりながら「由布院の夜が冷える。日本酒だな、今夜は」と思った。

夕食は明るい時間から始めたかったので湯を切り上げる。

17時には部屋に料理が運ばれてくるからだ。

湯上りに縁側で涼んでいると、春を喜ぶ鳥の声がそこかしこから響いていた。

それ以外には、湯と葉が風に吹かれ擦れ合う音しかない。

雑踏のない世界。

こんなゆとりを感じるのは久々。

しばらく目を閉じ涼んでいると「失礼いたします」との女中さんが夕食を運んできた。

名産の竹細工の籠に小鉢が5品並ぶ。

山菜の胡麻和えに小魚の南蛮漬けなど、いかにも酒の肴にぴったりだ。

お飲み物は?と聞かれドリンクメニューに目を通すと、意外にもワインリストも豊富だ。

確かに安心院町というワインの生産地も近くにあることだし、ワイン意識が高いのかもしれない。

そこに、かなりレアな名前を見つけた。

 

アルザス由布岳

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クリスチャン・ビネール ”ピノ・ノワール

クリスチャン・ビネールとはフランスの上部、ドイツとの国境にあるアルザス地方の名手で、特に白ワインが有名である。しかし、赤のピノとは珍しい。

アルザス地方は土に石灰を多く含むため、ちょっと硬質な雰囲気がある。

繊細なピノ・ノワールが合うのだろうかという心配は他所に、物は試しと注文した。

しばらくすると着物姿の女中さんが、盆にアルザスらしいスマートなボトルと大きなワイングラスを載せて運んできた。

綺麗な捌きで静かにグラスに注ぐ。

鮮やかなガーネット色のワインである。

少しオレンジが見えるのは夕日のせいか。

香りはラズベリーや少しミントのような雰囲気もある。

口に含むと静かな印象。

アルザスらしいタンニンがあるが、すぐに消え去り優しく余韻だけが静かに残る。

なんと爽やかながらも、どこか陰性なワインだろうか。

丁寧に作り込まれたしっかりとした味わいは、見事に調和され、決して主張しすぎることはない。

あたりに広がる木々と土、側の湯の香りがそこに輪唱のように響きあう。

もちろん、夕食の味付けにもよく合う。

どちらも主張しすぎず、素材の味を引き立て、そして調和し、消えていく。

和の出汁の味とアルザスピノがこんなにも合うとは。

互いに山間育ちのもの同士だからこそのマリアージュだと感じた。

 

間も無く陽が沈む。

赤く光る由布岳も、このワインのように、だんだん淡いガーネット色になる。

色まで溶け合うのか。

今夜はこの”自然”の全てを楽しむことにしよう。

 

あとがき

クリスチャン・ビネールはアルザスで代々受け継がれた名門ドメーヌです。

近年、女性に人気のあるビオワインの中でも、特に無農薬製法にこだわり、惜しげもなく手をかけて作られます。

自然派ワインをお探しの方には特におすすめです。

アルザスという山地の風景は、僕が子どもの頃に見た城島高原から見下ろす雰囲気に、どことなく似ていたので、このような妄想旅行を書いてみました。

いつも紹介するワインより多少高いですが、このワインがこの値段で買えること自体が奇跡的だとも思います。

爽やかな酸味はフランスの名産地ブルゴーニュピノ・ノワールにも似ていますが、芯がキリッとした印象と、まろやかな味わいはアルザスならではと言えます。

白身のお刺身、出汁の効いたお浸しなど、あっさりとした和食にぴったりです。

ワイワイする宅飲みもいいですが、静かに余韻に浸りながら楽しむのもまた一興です。

www.enoteca.co.jp

 

 

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