naographの徒然なるまま

きた なおや による その日暮らしの日記

妄想旅行〜ハイボールと+都会の並木道〜後編【閑話】

アンティークショップ”しかく屋”

今、僕は前日のロケ地であるビルの前で待っている。

待ち合わせ15分前か。早すぎたかな。

そしていると欅の街路樹のなかを彼女が歩いてくるのが見えた。

白地にパステル色の大きな花柄ロングワンピースに、ふわっとかけたパーマは後ろでひとつ結びに。

足元はドクターマーティンの可愛いイラストが描かれたショートブーツだ。

今日はメガネはなく、大きく切れ長でくりっとした裸眼。

メイクもナチュラル風でオレンジのアイシャドウが春らしい。
昨日のキャリア風を取り除いた、可愛さ純粋仕上げ。

これがギャップ萌えというやつ。

「お待たせしてすいません!」と謝られたが、そもそも遅れてないし、それどこではない。

秒速で平静さを装うが

「あ、いえ、全然まってません!さ、さっそく行きますか!」と動揺丸出しだ。

現場から椅子を運び出し、先日のアンティークショップへ歩く。

そうね、どうせ僕が運ぶに決まってるわけだし、それなら今日の彼女のファッションもうなづける。

 

そこはビルの1階にあるお店だった。

ペンキが剥がれたようなクラシック感漂う木の壁に小さな出窓、木製の大きなドアを挟んだ反対は大きなガラス張りの壁があり、店内の様子を伺える。

銅製の看板は緑青色に錆ており、その中には”しかく屋”と刻まれている。

和名なんだ、意外と思いながら、 ステンドグラスのはめられた木製のドアを開けた。

「いらっしゃい」

低くハリのある声が聞こえた。

灰色の髪(今時はロマンスグレーって言うらしい)と髭を蓄えた初老の男性が出てきた。

彼女が手早く昨日の事情を説明する。こういう時は昨日の”キャリア”な彼女に戻る。

「ああ、急がないのにわざわざすまんね。適当にその変に置いててくださいな」

と店の主人は優しい笑顔で答えてくれた。

軽く世間話をした後、「素敵なお店なんで、少し見ていっていいですか?」と彼女が聞いた。

主人は「ああ、いくらでも。どうせ家具たちも暇してたんだ。ゆっくり話してやってくださいよ」と我が子を眺めるような眼差しで辺りを見廻した。

言葉に甘えて僕らは広い店内を回る。

センスよく並べられた家具や調度品は、1点ずつ美術品のように置かれている。

骨董屋さんのごちゃゴチャしたイメージとは反対だ。

ふたりで「この椅子、いいね!」とか「うちにはこのテーブル入らないなー」とか、まるでカップルのように店内を見歩いた(彼女はそうは感じてないだろうけど!)

「あ、これ可愛い」と無邪気に微笑む横顔を眺めながら、僕は数年ぶりに心が躍る。

本当に昨日の彼女だろうか。プライベートでもこんなに変わる人、そうそういない。

不思議な魅力に惹く込まれていくのがわかった。

このまま終わっちゃうのかなーとネガティブ思考の自分が出てくる。

初対面の、昨日会ったばかりの人を誘うのは苦手だ。

でも、こういう出会いもまたとないわけで。

少しでも考える時間が欲しい僕が、ゆっくりと足を進めていると、いかにも100年位経ってそうな古本が並べられた本棚が見えた。

棚の向こうには全面張りの大きなガラス壁とドアがあり、その外には、おそらく2階へと通じる階段が見えた。

なんだろうとふたりで覗き込むと、後ろから手に数冊の本をもった主人が現れ

「ああ、うちの息子が2階でカフェバーをやっててね。よかったらランチもやってるし寄ってみてよ」と語る。

カフェバー?ランチ?

この時間を長く過ごす為には、何ておあつらえ向きな提案だ。

そして、なんというタイミングの良さ。

ご主人に見透かされているのだろうか。

彼はにこり微笑みんがら僕を見ているからだ。

僕は彼女に何気ない雰囲気を出しつつ

「どうします?」と聞く。すると、

「ちょうどランチタイムだし、行きましょっか」

と彼女は答えてくれた。

心の中で”よっしゃ!”と叫んだ。

仕事のトラブルもこうしたラッキーに繋がるから、人生何が起きるか分からなもの。

欅の葉が見えるテラス

階段を登るとダウンライトに照らされたガラスドア。

そこを開けると右手に大きなL字のカウンター席、左手にはテーブル席3つ、ソファー席が1つあった。正面は大きく開放されていて、目の前にはいま通ってきた欅並木のちょうど葉の部分が見える。

まるで、店の奥がキラキラとエメラルドみたいに反射しているようだ。

店内はモダンなコンクリート打ちっぱなしで、天井の配管もみえているが、置かれているチェストやコートスタンド、ソファーなどはアンティークだ。

おそらく1階のご主人のセレクトだろう。これ以上ないオサレな空間に仕上がっている。

カウンター席に座った僕らはランチコースを頼み、先ほどのアンティーク家具の話で盛り上がっていた。

食事も一頻り終えたところで、彼女から意外な提案がされた。

「お酒、好きですか?」

もちろん僕は「ええ、大好きですよ」と答えると

「よかった。お時間あったら、そとも天気いいし、そこのテラス席で飲みませんか?」と誘われた。

女性からお酒を誘われるなんていつぶりだろう。
「全然大丈夫ですよ、是非」と答えた。

「何がいいですかねー」と聞かれた。

彼女はなんでも飲めるクチらしい。

彼女のイメージは、芯があってクセも強いけど、華やかであり、チャーミングである。

昨日のような重めでキリッとした雰囲気もあれば、すっきり爽やかな今日の雰囲気も持ち合わせている。

ONOFFしっかりしているし、個性的であり、容姿もスマートで美しい。

ワインもあるが、思い浮かべるワインがなかった。

いや、ワインでも完全に彼女らしいのはなかったのが本音。

そこにふとラベルが飛び込んできた。

これだ

彼女のイメージにぴったりだ。

これ以上ない。

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ラフロイグ10yのハイボール

 

ラフロイグハイボールにミントを添えて

アイラの女王である。

ストレートでは芯があり癖の強いラフロイグも、ソーダで割るとその重い衣が気泡のように剥がれ、その一粒一粒が弾けるたびに、華やかなレンゲのような香りがする。

ボディーはしっかりしているから、割っても崩れず、逆に女性らしい丸さとチャーミングさが出てくる。個性的なピートは、泡によって弾けミントと溶け合い、爽やかな風となる。

この二面性が彼女の雰囲気そのものだ。

ロングのグラスに硬い氷を2つ、氷に触れぬようゆっくりとラフロイグを注ぐ。そこに、これまたぐらすにそう様にゆっくりと強炭酸を注ぐ、下から軽くゆっくりとステア。

女王は丁寧に優しく扱わねばならないのだ。

スペアミントを手で軽く叩きグラスの上に添えれば彼女の出来上がり。

2杯出来上がる。僕のは少し濃いめ。

「お待たせしましたー」とカウンターに綺麗なシャンパンゴールドのような色をしたハイボールが二つ。

それらを受け取った僕らは外のテラスへと。
席は空いていたが、手すりに寄り掛かり外の新緑に輝き、風に吹かれる欅の葉を眺めた。

彼女の髪もなびく。

ロングのタンブラーをもつ彼女の横顔は、この青さに溶け込むようだ。

このハイボールを飲みながら眺めるには最高の絵画のようだった。

彼女は初めてこれを飲んだらしく

「すごいいい香りするし、飲みやすから好きですこれ!へぇー、ウイスキーって知らなかったなー」

と気に入ってくれたよう。
何より何より。

余韻に浸る僕に彼女は「もう1杯いきます?」

え、もう飲んだの?

さすが女王、お酒もお強そうで。

彼女の笑顔に呼応するように欅の葉も楽しげに揺れている。

僕はふたたびカウンタへーおかわりを2杯注文しに行く。

今回の出張は、いいより道ができた。

 

最後に

こんな長編のイメージをしながらベランダで飲むラフハイ。

鉢に植えたスペアミントをちぎるためにもベランダに出る必要があったのだ。

ミントと炭酸の清涼感が喉を通る。

 

目の前の公園では緑の木々が踊る。

ベランダもいいが、やはりこんなお店あればいいなと思いにふける。

早くこんな事態が収拾して、外に飲みに行きたいものだ。

 

 

 

あとがき

まさかの長編になってすいません。

いつもはお酒を人に例えるのですが、今回はお酒を擬人化させてみました。

例えるよりも擬人化する方が大変で、人物像を作るために、どうしても説明が長くなってしまいました。ブログには向きませんね(笑)

お店の方は、実在する2つのお店をリミックスしてみました。

まさに、あったらいいなのいいとこ取りです。

妄想ならではの楽しみ方だと思います。

皆さんも楽しみつつ妄想にふけってみてはいかがでしょうか。

どんなお酒を擬人化しますか?

ぜひ、お会いした時にお聞かせください。

その時は乾杯しましょう。

ここまで読んでくださりありがとうございました。

今度はもっと短くします。 

 

 

 

 

 

 

 

妄想がとまらないよね!って方は是非このわたくしめにお任せください↓

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